MAR ADENTRO

映画・音楽・本とりあえず何でも食べますはっきり言って宇宙人ですはい。日記もつけますボケ防止のために。変な女子高生の変哲のない日常を覗きたい悪趣味な方はエンタープリーズ

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樹下のふたり



あれが阿多多羅山、
あの光るのが阿武隈川。

かうやって言葉すくなに坐ってゐると、
うっとりねむるやうな頭の中に、
ただ遠い世の松風ばかりが
薄みどりに吹き渡ります。

この大きな冬のはじめの野山の中に、
あなたと二人静かに燃えて
手を組んでゐるよろこびを、
下を見てゐるあの白い雲にかくすのは止しませう。

あなたは不思議な仙丹を魂の壺にくゆらせて
ああ、何といふ幽妙な愛の海ぞこに人を誘ふことか、

ふたり一緒に歩いた十年の季節の展望は、
ただあなたの中に女人の無限をみせるばかり。

無限の境に烟るものこそ、
こんなにも情意に悩む私を清めてくれ、
こんなにも苦渋を身に負ふ私に
爽かな若さの泉を注いでくれる、

むしろ魔もののやうに捉へがたい
妙に変幻するものですね。

あれが阿多多羅山、
あの光るのが阿武隈川。



ここはあなたの生まれたふるさと、
あの小さな白壁の点点が
あなたのうちの酒庫。

それでは足をのびのび投げ出して、
このがらんと晴れ渡った北国の
木の香に満ちた空気を吸はう。

あなたそのもののやうな此のひいやりと快い、
すんなりと弾力ある雰囲気に肌を洗はう。

私は又あした遠く去る、
あの無頼の都、混沌たる愛憎の渦の中へ、
私の恐れる、しかも執着深い
あの人間喜劇のただ中へ。

ここはあなたの生まれたふるさと、
この不思議な別個の肉身を生んだ天地。

まだ松風が吹いてゐます、
もう一度この冬のはじめの
物寂しいパノラマの地理を教へて下さい。

あれが阿多多羅山、
あの光るのが阿武隈川。
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  1. 2006/10/17(火) 21:16:11|
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Author:マーブル岡野
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